我が意を得たり

昨日、日本フルート協会の機関誌が送られて来ていた。
いつもならサラッと読み流して生徒に渡すのがお決まりだったのだが
今回は素晴らしい記事があると生徒から聞いたので是非お知らせしたい。

それはトレバー・ワイが寄稿した「現代フルート演奏の汚点」と題された
シリーズで今回が第一回目。

なんと「世界各地の過去のフルート奏者のほとんどが、正しい音程で演奏する技術を知らず、今なお多くが知らないのである。証拠はレコード盤やCD、テープに残されている」と断じている。

また「現代フランスの名手たちの影響で美しい音、完全なテクニック、よどみないアーティキレーションのみが目指す道だと多くの人が考えるようになった」

「そして、名手達は音程のことをなおざりにしてきた」と主張している。
すなわちフルーティストの根幹であるフレンチスクールが間違いの始まりだと言っているのだ。
僕自身もアンドレ・ジョネの弟子だからその辺は凄く理解できる。
特にフランス人は音色やテクニックにはうるさいが、音程に寛容過ぎると思っていた。
パリ管の古い録音などを聴くとハーモニーなどあったものではない。
その音程感覚は限度を超えた世界だ。
ユニゾンで音がハウルし、伸ばしで音程が下がっていくのもお構いなし。
まさに棒弱普請だ。フランスのオケはその点ではどこも似たようなものだ。
まあ、それが味と言われてしまえば返すことばも無いが・・。

誤解の無いように言うが、僕はフランスのオケの音は嫌いではない。
特にラヴェルやドビュッシーをやらせたらその独特の色彩感がたまらない。
ただ、音程がもう少し良かったらもっと素晴らしいものになったであろうことは疑う余地がない。
今回はフルートの話だが、他の管楽器にもおそらく問題は発生する。
なぜなら、管楽器はキイさえ押さえれば誰でも手軽にある程度の音程を確保出来る
「大欠点」を持っているからだ。これが弦楽器だとこうはいかない。
耳の悪い奏者は良い音程を作る事すら出来ないからだ。
だから、弦楽器奏者は良い音程のトレーニングに余念がない。

ジョネ先生の名誉のために言っておくが、彼の卓越した教授法はと音楽的解釈は
世界の他のどの教師も追従できね高レベルのものだった。その中に音程の
問題は含まれていた。それは、音楽的な色彩までも表現させる微妙な音程の
演奏法まで含んだものだったが、どれほどの生徒がそれを理解できたかは定かではない。
なぜなら、彼の表情からその音程を読み取る感受性と、即座に反応出来る能力が備わっていないと対応出来なかったからだ。

僕はかねてからイギリスの奏者たちの演奏は、ソリスティックではないが、淀みないハーモニー感、すなわち音程感では群を抜いていると思ってきた。要するに「わかる人たち」なのだ。
イギリスのオーケストラの管楽器がまとまってオルガンのように響くハーモニーは美しい。

音程はわかる人にとっては絶対的なものであり、わからない人にとっては、絶対になおざりにしてはならない重要ポイントだからだ。なぜなら、その音程一つが音楽の流れや心地よさを左右する大きなポイントになるからだ。聴いてわからない人にとっても、それは聴いていて「心地良い」という感受性を刺激するもっとも重要なファクターなのだ。

トレバー・ワイはもちろんイギリスの奏者であり、奇抜なリサイタルで知られるが、それより彼は彼の書いたフルート教本で卓越した理論と指導法を展開する素晴らしい教育者でもある。その彼が今回フルート奏者の最大の欠点である「音程」を指摘したことは本当に嬉しい。なぜなら、他の楽器奏者が聴く今日のフルート演奏は酷い音程の、もしくはミステークだらけの
・・・(なぜなら音程の外れた音は音を間違えたのに等しいからだ、それも世界の超一流と言われる人々の演奏がそうなのだ。その教え子が世界中に散らばりその教えを忠実に守り、そのまた教え子が・・と数珠つながりに問題を拡散する。何らかの拡散防止条約の締結が急務だ)・・・
すさまじいテクニックの嵐の演奏は信じがたい間違いだらけの音をを駆使しているようにしか聞こえないからだ。

彼はこう続ける・・
「音程の悪い演奏というのは単にチューニングの問題というのではなくて、それは各音符が間違ったピッチで・・すなわち、間違った音で演奏されていると言うことなのだ。ヴァイオリン奏者は、正しい音程を常に意識するだけでなく、表現音程(音楽的音程)の力を認識しているものだ。表現音程とはもちろん調性や和声によって音程の取り方を変えることだけれども、彼らが「支え」で音が下がるのを防ぐといった話を聞いたらいったいどう思うであろうか」
笛吹はすぐ「支え」という言葉を使う。
しかし、この支えだけで音程が維持出来るなら、腹巻きを何重にもしてトレーニングにいそしむ。

フルーティストは音程を楽器のせいにする。
しかし、どんな素晴らしい音程のスケールを持った笛も奏者によってすべて壊される。
そして、もっと良い音程のフルートを探すのかもしれない。
しかし、そういう奏者はその笛が良い音程で設計されているか否かを判断すら出来ないのだ。
なぜなら、耳の良い奏者はどんなに酷い音程の楽器でも修正して演奏する能力を持っているからだ。


僕ぐらいのフルート奏者が声を大にして言ったところで、「またあの変わり者が変な事を言っている」ぐらいにしか思われないので、かねてから鬱積していたフルート界という狭い世界でのみ通用する現代の演奏法に「NO」を言ってくれたトレバー・ワイに大拍手を贈りたい(トレバー・ワイも変わり者で通ってるか・・)

興味のある方は 日本フルート協会 に問い合わせて、是非この記事を読んで欲しい。

theme : フルート
genre : 音楽

tag : フルートの話題 我が意を得たり

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